イロハモミジの家について考えたこと

Instagramを中心に家づくりの情報を集めていたOさんは、ある一枚の写真に心奪われたそうです。

食卓の傍に大きな窓があり、窓には輝く青葉が一面に映し出されている。

その写真は、こぢこぢが手掛けた『こもれびハウス』にお住まいの@fuka_0718さんが投稿したものでした。

そして、Oさんは「美しい自然を身近に感じながら暮らしたい」と思い、家づくりのパートナーとしてこぢこぢを選んで下さいました。

そんなOさん家族が心地よく暮らすために、4つのことを考えました。

1)アウターリビングにイロハモミジの日傘をつくる
2)「LDKと庭の境界=窓」の機能を最適化する
3)ロフト空間を活用する
4)床下暖房レガレットで暖かく過ごす

1)アウターリビングにイロハモミジの日傘をつくる

リビングに面して庭をつくり、草木を植える。
それだけでOさんの要望を満たすことはできます。

しかし、せっかく庭をつくるなら、ただ眺めるためのものではなく「屋外で過ごす時間を楽しむ庭」にしようと考えました。

庭に広めのデッキスペースを設けることで、光と風を感じながら食事や読書を楽しむことができます。
つまりデッキスペースはアウターリビング(屋外のリビング)です。

そして、アウターリビングでの時間をより心地よく過ごすために、一つのアイディアが思い浮かびました。

「アウターリビングに樹木の日傘をつくる」という発想です。

渓谷の樹木が光を求め川へせり出すように、建物際に植えたに樹木の枝葉でアウターリビングの上空を覆えないかと考えました。

アウターリビングからLDKを望む

日傘の役割を担う樹木は、横へ横へと流れるように生長していくモミジが最適です。

モミジには代表的な樹種としてヤマモミジ・イロハモミジ・オオモミジが挙げられます。太平洋側に自生しているのはイロハモミジとオオモミジ。その中から葉っぱが小さく上品な印象を持つイロハモミジを選ぶことにしました。

春は新緑の若葉、夏は木漏れ日、秋は紅葉(こうよう)を楽しむことができ、
落葉する冬は、リビングの奥まで届く日差しで日向ぼっこを楽しむことができます。
(冬は太陽高度が低い&遮る葉がない)

葉っぱの形が繊細な印象のイロハモミジ

2)「LDKと庭の境界=窓」の機能を最適化する

窓の機能を分解すると次のようになります。

1.採光(光を取り込む)
2.通風(風を取り込む)
3.眺望(LDKから庭を眺める)
4.開放(窓を開け放して庭とリビングを一体化する)
5.虫除け(網戸で虫が入らないようにする)

ご主人のKさんからは、窓を開け放して使うために、窓が戸袋(壁の中)に引き込まれる「引き込み窓」のご要望がありました。

奥さんのMさんからは、庭の景色が網戸越しのものにならないよう、網戸が戸袋(壁の中)に引き込まれる「引き込み網戸」のご要望がありました。

大きな2枚の窓と片側の網戸が戸袋に引き込まれる形式は、木製サッシでは珍しくはない仕様ですし、先ほどの5つの機能を全て満たすことができます。

しかし、実際の使い勝手をイメージしてみると、イマイチな点が浮かび上がってきます。それは通風の時に起こります。

窓を少し開ける→外に出る→サンダルを履く→縁側を戸袋まで歩く→網戸を引き出し、開けた窓まで戻る→サンダルを脱ぐ→中へ入る→網戸を閉める、という動作になります。結構面倒な気がしませんか?

そして、一連の動作をしている間、ほんの5〜10秒程度ですが、網戸なしで窓が空いている時間ができてしまいます。

さらに、もう一つデメリットがあります。網戸のサイズが大きな窓1枚と同じなので、通風をしている間、窓の半分は網戸が眺望の邪魔をします。

そこで、問題となる「通風」「虫除け」の機能を「眺望」「開放」から物理的に切り分けることにしました。

左側の細い窓2段が通風・虫除け用の窓
引き込み窓を開放したところ

左側の窓は常に網戸が入った状態になるので、その分、眺望が劣りますが、総合的には機能性が格段に上がったと考えています。

3)ロフト空間を活用する

屋根勾配を少し大きくすることで、ロフト空間を広々と確保しました。

変形した平面形状ですが、物置エリアとご主人の秘密基地エリアを分けて利用することができます。

秘密基地エリア

また、換気装置としての役割も果たします。
下階の階段室・廊下・サンルームとは吹き抜けを介して繋がっています。
暑い時期、1階や2階で温められた空気はロフトへと移動し、換気窓から排出することができます。
(重力換気や温度差換気と呼ばれています)

階段室からロフトを見上げる
ロフトからサンルーム吹き抜けを望む
ロフトから2階を見下ろす

4)床下暖房レガレットで暖かく過ごす

1階のLDKをより心地よく過ごすために、床下暖房レガレットを採用しました。

床下空間に張り巡らせたダクトに暖かい空気を循環させ、基礎コンクリート全体を温めることで、床下からのじんわりとした輻射熱を得るというシステムです。

玄関や納戸、トイレの床下も温められるので、ヒートショック対策としても有効です。

玄関土間床の下に埋め込まれるダクト
レガレット本体
床下に張り巡らされたダクト



Oさんの「自然を身近に感じながら暮らしたい」という想いからスタートした本計画。

四季折々に変化するイロハモミジを楽しみながら、家族との思い出を紡いでいくOさん家族の姿が目に浮かびます。

この家のタイトルを『イロハモミジの家』としました。

—————— DATA ——————
所在地   神奈川県鎌倉市
用途    個人住宅
構造    木造2階建
敷地面積  132.26㎡
建築面積  52.81㎡
延床面積  105.06㎡

『イロハモミジの家 / お施主さまの声』へ
https://kodikodi.com/blog/archives/9757

こぢこぢWEB『イロハモミジの家』へ
https://kodikodi.com/works/2106NO.php

こぢこぢWEB『これまでの仕事』へ
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