久が原のコートハウスについて考えたこと

ある日、父から電話があった。
「Tさんの知り合いが家を建てたいそうなんだけど、ちょっと電話してみてくれる?」と。

Tさんは父の小学校の同級生で、実家から目と鼻の先にある場所で不動産屋をやっている人だ。姉のクラスメイトHちゃんのお父さんという関係でもある。

『久が原のコートハウス』の施主Uさんが家を建て替えようとTさんに相談した際、どうやら小嶋の息子が設計事務所をやっていたことを思い出してくれたらしい。

古希(70歳)を目前に控えたUさんは、23年前に義父が建てた二世帯住宅(延床50坪)に息子さんと2人で住んでいた。大人5人が住むためにつくられたその家は、使わない部屋がいくつもある上、広すぎる庭も悩みの種だった。

心も体も元気な今、これからの人生をより豊かなものにしようと一念発起し、Tさん経由でこぢこぢに建て替えを依頼する運びとなった。

そんなUさん親子が心地よく暮らすために4つのことを考えました。

1)中庭をつくり、LDKの日照とプライバシーを確保する

敷地の南側にUさんの寝室を配置し、中庭を設けることで1階LDKへの日照とプライバシーを確保しました。

冬至の太陽高度と同じ勾配の屋根が見える
寝室から中庭越しに陽だまりのリビングをのぞむ

2)親と子の距離感を適度に保つ

息子さんの寝室からは中庭を介してUさんの寝室を臨むことができ、適度な距離感を保ちながらもお互いの気配を感じ取れる間取りとなっています。

Uさんは1階で暮らしを完結することができ、40代の息子さんは食事とお風呂以外は2階で完結するプランとしました。

また、ご近所さんを招いて茶会や食事会をすることも多いと伺い、息子さんがLDKを通らずに出入りできる動線を確保しました。

2階バルコニーから1階寝室をのぞむ
2階寝室

3)木製サッシでアクティブに暮らす

アルミサッシに比べ断熱性能が格段に高い木製サッシ。

中庭に面した窓を木製サッシにすることで、断熱性を確保しつつ、開放感のある大きな窓を実現することができます。

また、南北2面の引き込み窓を開け放てば、寝室〜中庭〜LDKが一体空間となります。気持ちの良い季節、家での暮らしをよりアクティブに楽しむことができるでしょう。

木製サッシで囲まれた中庭
木製サッシを開けるとLDKと中庭と寝室がつながる
LDK

4)床下暖房レガレットで暖かく過ごす

ほとんどの時間を1階で過ごすUさんが心地よく過ごすために、床下暖房レガレットを採用しました。

床下空間に張り巡らせたダクトに暖かい空気を循環させ、基礎コンクリート全体を温めることで、床下からのじんわりとした輻射熱を得るというシステムです。

トイレやお風呂の下のコンクリートも温められるので、ヒートショック対策としても有効です。

様々なご縁がつながり、地元、久が原で家づくりを行えたことが本当に嬉しく、感慨深いものがありました。

家のタイトルをつけるとき、その家らしさを一言で表現するように努めていますが、この家にはやっぱり「久が原」という地名を入れるのがふさわしいように思いました。

一方、この家の特徴は何と言っても「中庭」です。

そこで、「久が原」に「中庭形式の家」という意味のCourthouseをくっつけて、「久が原のコートハウス」というタイトルにしました。

—————— DATA ——————
所在地   東京都大田区
用途    個人住宅
構造    木造2階建
敷地面積  168.89㎡
建築面積  84.24㎡
延床面積  112.56㎡

こぢこぢWEB これまでの仕事『久が原のコートハウス』はこちら↓
http://kodikodi.xsrv.jp/works/2102ku.php