庭CAMP HOUSE について考えたこと

都内にお勤めのIさんは、上の子が小学校に入学するタイミングで、地元、静岡県裾野市エリアに移り住もうと考えていました。

そんな中、地元の知り合いSさん(こぢこぢが手掛けたFUN!HOUSE!の施主)からこぢこぢを紹介されたIさんは、過去事例の雰囲気や家づくりに対する姿勢に共感し、設計監理を依頼する運びとなりました。

Iさんが地元に戻ろうと思った大きな理由に「庭を楽しむ暮らし」が挙げられます。

数年前からキャンプにハマっていたIさんは「わざわざキャンプ場に行かなくても、気が向いた時に庭でサクっとテントを張り、BBQやハンモックを楽しめる」そんな庭のある暮らしを思い描いていました。

そんなIさん家族が心地よく暮らすために、4つのことを考えました。

1)理想の暮らしから逆算した場所選び

ご要望・資金計画の前提条件を整理した上で土地探しを始めたところ、Iさんは市街化調整区域にある川沿いの不整形な土地(300㎡)にピンときたようです。

都市計画法43条許可や川沿いの擁壁に対する崖条例等、建築以前のハードルの高さに一瞬ひるみましたが、川の向こう岸に広がる風景は「庭でキャンプを楽しむ暮らし」には最高のロケーションでした。

西側に広がる牧歌的な風景
西側に田畑が広がる(写真の上側が北)

建物の配置を検討する際、まずはリビング・ダイニングを真南に配置することから始めます。
(夏の日射遮蔽と冬の日射取得に対して最も理想的な配置)

しかし、真南に向けたまま南側の庭を広く取ろうとすると建物が北西の川(擁壁)に近づいてしまいます。
(擁壁に近づくほど基礎下の杭を深くする必要があるので、杭工事費を考えると川から離したい)

そこで、眺望・庭の広さ・杭工事費の最適なバランスを模索し、建物を少し西側に振った配置を導き出しました。

2)楽しみ尽くす庭をつくる

こうして確保した広めに庭に芝生を張れば、庭でキャンプをすることはできます。
しかし、せっかく暮らしのすぐ側にある庭なので、もっと色々な楽しみ方ができる庭にしようと考えました。

まず、道路や隣家の視線を気にせず楽しむため、川に面していない南面と東面は高めのウッドフェンスで囲います。

次に、庭での過ごし方を具体的にイメージしながら、屋根の有無、地面の素材、眺望等、楽しみ方の異なる様々な居場所をつくりました。

■芝生のテントサイト
川沿いにテントを張るための広めの芝生スペースを確保しました。
家から一番離れた場所で牧歌的な風景を眺めて過ごすことができます。

■半屋内の縁側デッキ
リビング・ダイニングに隣接した広めの屋根下スペースを確保しました。
小ぶりなテーブルを常設すれば、屋外での食事をいつでも気軽に楽しむことができます。

■木漏れ日の下の月見台
庭の中央に配置した4m角程のデッキスペースは高木落葉樹によって上空を覆います。
木漏れ日の下での食事を楽しんだり、夏場はビニールプールが常設されているかもしれません。

■夕陽を楽しむサンセットデッキ
遠くの山並みに沈むサンセットを楽しむための特等席です。
夏の夕暮れ時に嗜むアペリティフ(食前酒)は格別の時間となるでしょう。

そして、落葉広葉樹のコナラ・ソロ・モミジを主木とし、冬場さみしくならない程度に常緑のサワラ・ソヨゴを所々に配り、まるで高原の雑木林のような庭を目指しました。

3)国産材を使用する

敷地のすぐ裏には薪炭用のクヌギ林(雑木林)があり、さらにその向こうの山々には杉の森が広がっています。

「雑木林のような庭」のある暮らしを想像した時、家(建築)の材料に「国産の木」を使うことが自然なことのように(違和感が少なく)感じました。

しかし、構造強度・屋外での耐久性・屋内での意匠性を考えると、全てを国産材にするのは、かえって不自然。
適材適所、可能な範囲で国産材を使用することを目指しました。

■外壁「焼杉」
焼杉とは瀬戸内海の沿岸部で多く使われている外壁材で、杉板の表面を焼き焦がし炭化層を表面に作ったものです。
焼くことで生じる炭化作用は防虫・防腐の効果があり、耐久性も高くなります。
ノーメンテナンスで30年以上もつと言われ、不具合が起きた箇所だけ部分交換することも可能。
表面のゴツゴツとした凹凸と鈍い輝きは、シンプルな外観をシックに引き立てます。

焼杉の外壁

■玄関〜LDKの内装壁「杉板張り」
一般的に杉材は、幹の中央部の赤身と端部の白太の色の差が激しく、無塗装やクリア塗装で使おうとすると、ワイルドな雰囲気になりがちです。
今回は木理(木目の意匠)を活かすために杉を採用する訳ではないので、白く塗装して仕上げました。
石膏ボードの白塗装やビニルクロスとは異なり、繰り返される目地のリズムや板表面に浮かび上がる木目の凹凸がインテリアに本物感を漂わせます。

4)片流れ屋根で重力換気を活かす

こぢこぢでは珍しい片流れ屋根を採用しました。

都心部では、厳しい北側斜線規制をかわすために、北下がりの片流れ屋根の家を見かけますが、敷地にゆとりのある『庭CAMP HOUSE』では南下がりとしています。

■南下がりの片流れ屋根のメリット
・南側の軒を出し、高さを抑えることで、夏の日差しをカットできる。
・北側壁の最上部に換気窓を設けることで、夏場、建物上部に溜まる暑い空気を排出できる。
(重力換気の活用)

※重力換気とは
比重の軽い暖気は上昇し、比重の重い冷気は下降するという原理を利用した自然換気の一種。
建物の上部に設けた高窓を開くと、高低差と温度差によって上昇気流が発生し、家中の空気が高窓から排出される。



Iさんの「庭でキャンプを楽しみたい」という想いから始まった本計画。

夕陽の見える雑木の庭でアウトドアを楽しみ尽くすIさん家族の姿が目に浮かびます。

この家のタイトルを『庭CAMP HOUSE』としました。

—————— DATA ——————
所在地   静岡県御殿場市
用途    個人住宅
構造    木造2階建
敷地面積  310.67㎡
建築面積   82.47㎡
延床面積  113.98㎡

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