サンドイッチハウスについて考えたこと
私の姉家族が見つけてきた20坪の敷地は、小さな町工場と住宅が密集した下町風情漂う通りにあった。細長い敷地の3方には隣家が建ち並び、道路を挟んだお向かいさんには、ワンルームマンションがこちらに向かって建っていた。
この小さな敷地で、プライバシーを確保しつつも明るく快適な家をいかにしてつくるか?そのヒントを探していた折、義兄の口から「背戸(せど)」という聞き慣れない言葉を耳にした。農家を営む群馬の実家には、母屋と納屋の間に作業場となる中庭のような場所があり、暮らしに密着したその外部空間を背戸と呼ぶのだそうだ。実際に群馬を訪れ、そこで過ごしてみると、何とも表現しがたい不思議な心地よさを感じる場所だった。もしかしたら、母屋と納屋の間に「たまたま残っちゃった場所」という認識が、素の自分をおおらかに受け入れてくれるような感覚を呼び起こさせているのかもしれない。
さて、東京の敷地であろうと「たまたま残っちゃった背戸」をつくるためには母屋と納屋が必要不可欠。塔状個室群と小屋型リビングをそれらに見立て、二枚の大きな壁で挟み込んで出来たのがサンドイッチハウスだ。さらに屋外のような明るさと視線の抜けを生み出すために少し大きめな天窓を設け、より背戸感を強調させた。天窓から差し込む日差しは、その角度で移ろう季節を感じさせ、日々の暮らしに彩りを与えている。