Room402について考えたこと

2009年のある日、私が住んでいた賃貸マンションのオーナーさんからリノベーションの相談を持ちかけられました。

築38年のマンションの1室をフル改装するのだが、良ければそこに住まないかと。
もちろんこぢこぢさんの好きにして良いよと。

二つ返事で快諾しましたが、37㎡の部屋をどのようなスタンスで設計しようかと悩みました。

みんなが、アッ!と驚く部屋をつくるのか?
あるいは妻と私が日々をゆったりと過ごせる家をつくるのか?

私は後者を選ぶことにしました。
37年前の躯体とアルミサッシは想像以上にくたびれた感じで、味というより粗野という言葉がぴったり。
しかしツルピカの質感に違和感を覚えるようになっていた私にとっては、非常に魅力的な素材に思えました。
その力強さに負けない素材として、幅広オーク床·木網セメント板·古材足場板·白ガス管を組み合わせ、私たち夫婦のための部屋Room402 が出来上がりました。

「自分のための家を考え、住む。」
この経験は私の設計スタンスに大きな影響を及ぼし、見たこともないような面白い家ではなく、心穏やかに過ごすための心地のいい家を目指すきっかけとなりました。