Barbourハウスについて考えたこと

ご主人のTさんは子供の頃から「渡辺篤史の建もの探訪」を毎週欠かさず観ていた方です。

2017年10月放送の『FUN!HOUSE!』でこぢこぢを知り、2019年10月放送の『こもれびハウス』でこぢこぢへの想いを強めたそうです。

色々な住まいや建築家をご存知の上でこぢこぢへお声がけ頂いたことをとても光栄に思いました。

そして、新築しか探訪しないTV番組を見て、マンションリノベーションのご依頼を頂いたことを何よりも嬉しく思いました。

こぢこぢが大切にしている根っこの部分に共感されたからこそ、リノベーションでも自分達らしい家がつくれると思って頂けたのではないでしょうか。

Tさん家族に初めてお会いした時のこと。

ご夫婦はお二人とも味の出たBarbourコートを着ていらっしゃいました。

Barbourは1894年に創業したイギリス王室御用達のアウトドアブランドです。Barbourのコートにはオイルドコットンという生地が使われていて、オイルを染み込ませたコットンに防水と防風の機能を持たせているのが特徴です。

しかし、油が他の服に付いてしまうとか、よく乾燥させないと油臭くなるとか、満員電車に乗るときは脱いで裏返さないといけないとか、とにかく扱いづらいという話を耳にします。

一方、オイルドコットンの経年変化は独特の風合いがあり、愛好者からは絶大な人気を博しています。

Tさん夫妻はそんなBarbourコートを7年前から着続けているとのことでした。

そんなTさん家族が心地よく暮らすために、4つのことを考えました。

1)レンガタイルのモワモワ仕上げで「らしさ」を出す

Tさん達らしい家にするために、オイルが良い感じに抜けたBarbourコートのような、風合いのある壁をつくろうと考えました。

『こぢこぢの家』と『久が原の家』で採用した「削りレンガタイル仕上げ」。そのBarbourバージョンを模索しましたが、施工途中で目地材の拭き残しによるモワモワした風合いが現れたので、それを生かすことにしました。

Tさん達らしい唯一無二の壁が出来上がりました。

レンガタイルのモワモワ仕上げについてはコチラ↓
https://kodikodi.com/blog/archives/8051

2)リモートワークを想定したワークルーム

コロナ禍による社会情勢の変化を睨みながら設計を進めていくことになりました。

元々週に何日かは在宅ワークをしていた奥さま。当初はスタディコーナーがあれば十分だと考えていました。

ところが、緊急事態宣言により小学校へ登校できない状況となり、ガラスでしっかり区切ったワークルームをつくることにしました。

机2つとたっぷりの収納棚を設けることで、リモートワークに限らず、子供の勉強やおもちゃ置き場等、多目的に利用する部屋としました。

3)家事効率を考慮したウォークスルーファミリークローゼット

Tさんから頂いた要望書には家事動線や収納等、機能性に関することがびっしりと書かれていました。
夫婦共働きのTさん達にとって、限られた時間で効率よく家事を行うことはとても重要なミッションです。

家族全員の服を一か所でまとめて管理することで家事の時間を短縮することができます。

また、玄関↔︎コート掛け↔︎ファミリークローゼット↔︎脱衣室↔︎UBという動線をつくることで、さらなる効率UPを目指しました。

玄関に手洗器を設置することも考えましたが、洗面コーナーとそれほど離れていないので取り止めました。

土間スペースのコート掛け・傘掛け・下足棚

4)子供の成長を考慮した個室計画

・家族4人で雑魚寝がしたい今
   ↓
・上の子に個室が必要になった時
(ワークルームを上の子の個室に)
   ↓
・下の子にも個室が必要になった時
(寝室を間仕切り子供室2室に。ワークルームを夫婦寝室に)

と段階的な対応ができるような間取りにしました。
ワークルームに設置する造作の棚・収納、購入予定の無印の机は将来それぞれの個室へ持ち込めるよう、サイズ・固定方法・設置場所を考慮しています。

この家のタイトルはTさん達に初めてお会いした時に決まりました。
はい、もちろん『Barbourハウス』です。

そういえばこの家、目に見える仕上材については、新建材が使われている面積がとても小さく、大部分は経年変化で味わいが増す素材が使われています。

子供の成長とともに深みを増していくBarbourハウス。
歳を重ねることをポジティブに楽しむTさん達の姿が目に浮かびます。

————————— DATA —————————
所在地   神奈川県川崎市宮前区
用途    個人住宅
構造    鉄筋コンクリート
延床面積  71.28㎡
既存竣工年 2003年

※2021年秋、竣工撮影予定