ダーニングハウスについて考えたこと

築43年の和モダン住宅をHさん達らしい空間へと刷新するため、4つのことを考えました。

1)既存の良さを上手に生かす
既存躯体の素材の良さ、力強さ、その時代ならではの軸組の美しさを生かす。

2)過去のデザインにとらわれず、これからの暮らしをデザインする
「和モダン」にとらわれず、Hさん達が心地いいと感じる空間に仕立てる。

3) 間取り変更は行うが、既存躯体をいじめない
強くするための補強はするが、間取り変更のために柱抜きや柱移動は行わない。

4)予算の配分にメリハリをつける
・家族が長い時間を過ごすLDKはとことん拘る。
・水回りは機能・意匠・予算をバランス良く。
・その他の箇所については大胆に割り切る。

既存写真↑


既存写真↑


既存写真↑


既存写真↑

長きにわたり丁寧に使われてきた古い家。
その家を購入した家族がLDKと水回りを大胆に刷新。
その古い家にこれまでとは違った新たな価値が加わった。

こぢこぢがこれまで大切にしてきた価値観が凝縮されたようなとても素敵なストーリー。
ん!?なんか最近似たような話をどこかで聞いたような気が・・・
そうだ!「古い家」を「古いセーター」にしたら、まるでダーニングの話じゃないか!

この家のタイトル「ダーニングハウス」はこうして命名されました。

——————ダーニングについて——————
ダーニングとは、ヨーロッパで伝統的におこなわれている衣類の穴の補修法のこと。ここ数年、環境への配慮や使い捨て文化を見直そうという世界的な動きの中、欧米で注目が高まり、日本でもよく耳にするようになりました。いわゆる「お直し」は日本でも昔からありますが、穴が空いた箇所があったら、できるだけ目立たないように補修するのが一般的で、決してオシャレなものではありませんでした。しかし、ダーニングは敢えてカラフルな糸で目立つように補修することも多く、「良いものを長く着ること=素敵なこと」というポジティブなものとして捉えられています。
http://darning.net/2016/09/about-darning-ダーニングとは/
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2階寝室はコスト的に大胆な割り切りが必要だったため、最もダーニング的な工事が行われました。

構造金物補強の指示書
最もメリハリの効いたダーニング的工事箇所

構造金物の補強が必要な既存壁は厚さ15mm程の「石膏プラスター+漆喰」仕上げ。
漆喰壁と言えば、石膏ボードに直接1〜2mm程塗るのが主流の今、この贅沢な壁を全て壊してしまうのはあまりにも勿体無い。(厚塗りの分、調湿効果も高い)

仮に全て石膏ボードを貼り直してビニルクロスで仕上げたとしてもかなりの手間とコストがかかってしまいます。

そこで、必要な箇所だけ部分的に壊し、金物補強後、漆喰で部分的に塞ぐことを考えました。(漆喰を全面に塗るとコストが掛かり過ぎます)

しかし、新旧の漆喰の境目や色・質感の違いは、ごまかし的な「お直し」に感じてしまうでしょう。だったら敢えて全く違う素材(板)で塞いだ方が潔ぎ良いように思いました。ダーニング的な発想です。(大工工事で行えるのでコストをかなり抑えることができます)

こうして出来上がってみると、それほど違和感を感じないから不思議です。それどころか、この仕上げに決まるまでの物語を知っていると愛着すら感じてしまうのは僕とHさんだけでしょうか。笑



ダーニングハウスでの暮らしぶりはHさんのInstagramをご覧ください↓
https://www.instagram.com/darninghouse/?hl=ja
ユーザーネーム→@darninghouse