9坪ハウスについて考えたこと

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大きな街道沿いに虫食い状の不整形なコインパーキングがあり、そこに面して古い空き家が点在している、そんな奇妙な一角がありました。この将来の大規模マンション用地に、期間限定の賃貸木造戸建住宅を建てたいという相談を持ちかけられました。事情が事情なのでもちろんローコストが大前提ですが、ローコストなりにも入居者を魅了する物件にしたいという要望でした。かなり高いハードルのように感じましたが、まずは賃貸住居の事例である私の自邸「Room402」を見てもらうことにしました。(現在の自宅は「こぢこぢの家」)

まず気に入ってくださったのがオーク床をはじめとする「素材感」。そして天井にしつらえた「ハンガーパイプ」。「ハンガーパイプ」は室内物干・ペンダント照明・観葉植物・ハンモック・絵・棚等を吊るすことができる上、間仕切りカーテンのレールとしても利用でき、入居者が自らの手で部屋をカスタマイズして楽しむための「仕掛け」です。

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Room402    ※詳しくはこちらをご覧ください。https://kodikodi.com/works/0909ek.html

 

ローコストかつ魅力的な物件を実現するために先ず行ったのは、予算配分の方針を決めること。入居者にとって大事なことは、家の中で一番長い時間を過ごす場所であるLDKの居心地です。そこで、LDKだけにはそれなりのコストを裂き、それ以外、つまり外装材や1階の内装材等は可能な限り安価なものにする。「こだわり」のために大胆な「割り切り」を行い、予算の範囲内に納めようという方針です。結果的にはオーク無垢床・ベイツガ荒板天井・トドマツ荒板壁を使用することができました。

この建物の一番の魅力は黒皮仕上げの鉄骨トラスです。この規模の建物であれば、柱・梁のない一室空間を構造的に成立させるのはそれほど難しいことではありません。しかし、ただ船底天井が見えているだけのシンプルな空間を想像すると、ちょっと面白みのに欠けるような気がしました。

どこか懐かしい雰囲気のある鉄骨トラスはこの建物と立地にしっくり馴染み、入居者の遊び心を受け止める楽しい「仕掛け」となりました。