THINKTHINK
これからご紹介する住宅は、どれも「住まい手らしさと、こぢこぢらしさが掛け合わされた家」となっています。5つの家のストーリーは手がけた順序に並べてあります。始めから終わりまで読んで頂き、家づくりに対するこぢこぢの姿勢を、ぜひとも感じ取って頂きたいと思います。

これからご紹介する住宅は、どれも「住まい手らしさと、こぢこぢらしさが掛け合わされた家」となっています。5つの家のストーリーは手がけた順序に並べてあります。始めから終わりまで読んで頂き、家づくりに対するこぢこぢの姿勢を、ぜひとも感じ取って頂きたいと思います。

サンドイッチハウス



サンドイッチハウス

2007 - 2008

私の姉家族が見つけてきた20坪の敷地は、小さな町工場と住宅が密集した下町風情漂う通りにあった。細長い敷地の3方には隣家が建ち並び、道路を挟んだお向かいさんには、ワンルームマンションがこちらに向かって建っていた。

この小さな敷地で、プライバシーを確保しつつも明るく快適な家をいかにしてつくるか?そのヒントを探していた折、義兄の口から「背戸(せど)」という聞き慣れない言葉を耳にした。農家を営む群馬の実家には、母屋と納屋の間に作業場となる中庭のような場所があり、暮らしに密着したその外部空間を背戸と呼ぶのだそうだ。実際に群馬を訪れ、そこで過ごしてみると、何とも表現しがたい不思議な心地よさを感じる場所だった。もしかしたら、母屋と納屋の間にたまたま残っちゃった場所、という認識が、素の自分をおおらかに受け入れてくれるような感覚を呼び起こさせているのかもしれない。

さて、東京の敷地であろうと、たまたま残っちゃった背戸をつくるためには母屋と納屋が必要不可欠。塔状個室群と小屋型リビングをそれらに見立て、二枚の大きな壁で挟み込んで出来たのがサンドイッチハウスだ。さらに屋外のような明るさと視線の抜けを生み出すために少し大きめな天窓を設け、より背戸感を強調させた。天窓から差し込む日差しは、その角度で移ろう季節を感じさせ、日々の暮らしに彩りを与えている。

IMAGE : サンドイッチハウス
IMAGE : サンドイッチハウス

PLAN : サンドイッチハウス

Room402



Room402

2009

サンドイッチハウスを終えた私は、建物の出来映えと喜ぶ姉家族の笑顔に、充実感を感じていた。しかし同時に、予算の大幅増加を強いてしまったことを深く反省していた。特殊な空間構成を成立させるために構造コストが割高になった上、背戸を演出しようと素材感にこだわったのが原因だった。予算管理の重要性を改めて肝に銘じ、次の機会にどう生かそうかと思ったとき、ふとひとつの疑問が頭に浮かんだ。空間構成と素材感、どちらを優先させるのか?それはお施主さんの好みによるよな?と思いつつ、もし自分の家だったら素材感かな??!サンドイッチハウスの経験を経て、どうやら自分の好みは変わりつつあるようだった。そんな折、私が住んでいた賃貸マンションのオーナーさんからリノベーションの相談を持ちかけられた。築38年のマンションの1室をフル改装するのだが、良ければそこに住まないかと。もちろんこぢこぢさんの好きにして良いよと。

二つ返事で快諾したが、37㎡の部屋をどのようなスタンスで設計すべきか···みんなが、アッ!と驚く部屋をつくるのか。はたまた妻と私が日々をゆったりと過ごせる家をつくるのか。私は後者を選ぶことにした。37年前の躯体とアルミサッシは想像以上にくたびれた感じで、味というより粗野という言葉がぴったりだった。しかしツルピカの質感に違和感を覚えるようになっていた私にとっては、非常に魅力的な素材に思えた。その力強さに負けない素材として、幅広オーク床·木網セメント板·古材足場板·白ガス管を組み合わせ、私たち夫婦のための部屋Room402 が出来上がった。自分が住む家を自ら設計する。この経験は私の設計スタンスに大きな影響を及ぼし、見たこともないような面白い家ではなく、心穏やかに過ごすための心地のいい家を目指すきっかけとなった。

IMAGE : Room402
IMAGE : Room402
IMAGE : Room402

PLAN : Room402

ブロカントハウス



ブロカントハウス

2010 - 2011

「木造平屋リフォーム済み! 築年数15年! 延べ床面積15坪!」
Mさん夫妻が5年前に購入した物件だ。娘と3人、小さな家で暮らしたい!お二人にとっては申し分のない広さだった。しかし、どうしても気に入らないことが一つだけあった。キッチンから食卓までの動線だ。一度、和室を突っ切らなければ食卓のある洋室へ行けなかった。その後息子さんが生まれ、さすがに少し手狭に感じ、どうしたものかと、こぢこぢへ相談する運びとなった。

動線問題を解決すべく、キッチン·和室·洋室を隔てる壁を取り払い、足りない床はロフトを設けて補うことで、立体的な広がりのある空間が出来上がった。現れ出てきた松丸太。古民家風を期待したが火打梁はスチール製で、和室の柱は集成材の化粧単板貼りだった。

築20年という年数はアンティークと呼ぶにはいささか浅すぎた。見られることを前提としてない構造材。それらの無骨な質感は、まるで何かの道具のように頼もしい風格を漂わせていた。空間の統一感を図るため、床·壁·天井はもとより、棚や手摺·カーテンレールに至るまで、可能な限り無垢材を使用した。木でも鉄でも理屈抜きにムクが合っていた。

この家を貫いている世界観。それを表すピッタリの言葉が見つかった。ブロカント(BROCANTE)というフランスの言葉だ。「アンティークほどの年月が経っていない、人々に愛されてきた古道具」という意味だ。これからも住まい手から愛され続けて欲しいという思いを込め、ブロカントハウスと命名した。

IMAGE : ブロカントハウス
IMAGE : ブロカントハウス
IMAGE : ブロカントハウス

PLAN : ブロカントハウス

中庭のある家



中庭のある家

2010 - 2012

仲良くしている工務店から「紹介したいお施主さん(候補)がいる」との電話があった。程なく送られてきた要望書。部屋の数から階段幅にいたるまで、かなり細かな内容だったがパティオの文字を見つけた時、私の顔はほころんだ。中庭プランは積年の夢。新宿からほど近いその土地に、プライバシーの守られた光あふれる静かな庭を !!! かくして[中庭のある家]は始まった。

正方形に近いその敷地には厳しい道路斜線の規制が掛かり、隣地の2面も北側斜線の規制があった。床面積の最大確保を目指しつつ、広めの中庭も確保したい。内から外へ押し広げようと試みる度、斜線規制で押し戻された。繰り返されたせめぎ合い。家族にとっての最適サイズが導き出された。

Room402に暮らして以来、私の中でインテリアの重要度が日増しに膨れ上がっていた。特に無垢の木が私に与えた影響は大きかった。手触り足触りも然ることながら、時間とともに増すその風合いにすっかり魅了されていた。無垢の木から教わった「経年変化」という概念。それは他の素材や家具を選ぶ際にも一つの大きな基準となった。「古びたときに美しさを増す素材」「時代の変化に耐え抜くデザイン」という眼差しの前では、モダンやカントリーといったカテゴリーはもはや何の意味も持たなかった。

IMAGE : 中庭のある家
IMAGE : 中庭のある家

フレーバーハウス



フレーバーハウス

2011 - 2012

週に一度は映画を見るのが日課となっているご夫婦。スクリーンを通して、あらゆる地域の多様な暮らしを目にしていたが、とりわけParisやNYのライフスタイルに強く惹かれていた。
二人が求めたのは、機能を満たす箱ではなく、趣のある空気感だった。

通常、お施主さんが入居後に買う家具小物類は、建築が固まった後に合わせて選ぶ、いわば脇役といったところだが、この家の家具達はむしろ主役と言っても過言ではない。
ソファ・イス・テーブル・照明器具・カーテン・壁のデコレーション・ラグマット・観葉植物等は世界観づくりの主役であり、高天井(2.75m)・縦長の窓・窓の額縁・幅木・ガラスブロック・鉄骨階段・H鋼柱・リブ状梁型・吹抜け・オーク床等の建築部材も、もちろん主役だ。本当の主役はお施主さんだけど・・・

結局、全ての家具や小物が揃うまでに思った以上の時間がかかり、竣工写真の撮影は引き渡しから1年後となった。しかし、ご夫婦にとってはまだ終わりではない。年月を重ねるにつれて役者が増え、無垢床は味わいを増していく・・・よりいっそう深まる趣 ( flavor )を、これからも楽しみ続けていくだろう。

IMAGE : フレーバーハウス
IMAGE : フレーバーハウス
IMAGE : フレーバーハウス

PLAN : フレーバーハウス

以降のPROJECTについては、WORKSをご覧ください。